色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」村上春樹(文藝春秋)

haruki村上春樹はどうも苦手だ。私のように具体的な人間は、目の前にそのものが見えないような抽象的な概念、思考についてゆくことができないのだ。はるか昔、「ノルウェイの森」を数ページめくって挫折してから、村上春樹は手に取っていなかった。周りにつられて、流行に乗り遅れてはならじと「1Q84」に挑戦したときは、推理小説だと思い読んだ。意味は良く分からなかったが、何となく読めるものだと思ったものだ。調子に乗ってまた読み始めた。「1Q84」よりは分かりやすいが、内容的には「1Q84」の方が深いし、面白い。
主人公、多崎つくるが大学時代に高校時代の4人の仲間たちに絶縁された。16年経ってからその理由を訪ね歩く姿を、現代・過去のつくるの姿を通して、物語の前半に描いている。恋人に勧められ訪ねて行くうちに一人が殺害されており、絶縁した理由も明かされる。色々な謎が出されるが、結局何も完結しないうちに終わってしまう。私にはこれが納得いかないのだ。「1Q84」も同様な手法だ。単細胞で具体的な人間には、小道具を出したら完結させてほしいのだ。これがとっつきにくい理由なのかな?何れにせよ、殺人事件の真相や恋人とのその後を描いて欲しい。


村上春樹は音楽に造詣が深い。彼の本を読んでいるとその音楽が聞こえてくるし、これがモチーフにもなっている。知らない曲ならそのCDを買ってしまう。この辺の商売は上手であるし、本を発売するときのメディア操作も一流だ。話はずれるが、池波正太郎は料理だ。実に美味そうに描く。思わず作ってしまうときもある。松本清張は旅である。読者が行ってもいない街並みを勝手に想像し、後日その場に立つと感慨も一入である。
クラシック音楽が登場する村上作品をちょっと拾うと、下のようになった。リンクを貼っておいたので、一聴をお勧めする。

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